34. SMARTの法則に従って目標を設定しよう!

■ SMARTの法則とは?

皆さんは将来の目標を設定していますか?
私は「法人を大きくする」という目標があります。この目標を達成するためには、どうすればいいでしょうか?  

ただ単にこの目標を設定しただけでは、目標を達成することはできません。なぜなら、人間は元来、楽なほうへ流れやすい生き物だからです。「今日は体調がいまいちだから」、「今日はクリニックが混んでいたから…」と、目標を達成するために行動することを先延ばしにしてしまいます。
そこでまず必要なのは、「いつまでにいくつ分院を増やすのか」というように、目標をより具体的に設定することです。皆さんもご存知かもしれませんが、これは「SMARTの法則」という目標設定の理論に従った目標の設定方法です。

ここで少しSMARTの法則についてお話しします。
この法則は、以下の頭文字、S・M・A・R・Tを取って名付けられました。

  • Specific
    (具体的な=目標が明確であること)
  • Measurable
    (計測可能な=測定が可能であること)
  • Achievable
    (達成できる=達成が可能であること)
  • Realistic
    (現実的な=達成が現実的であること)
  • Timely
    (指定時刻に作動する=達成の期限があること)
  • このSMARTの法則に従って目標を立てると、その本人に最適なレベルの目標が設定できるうえ、いつまでに何をすべきかが明確になることで、計画を立てられるようになります。計画ができれば、あとはそれに従って実行するだけで、目標を達成できるというわけです。

    非常勤勤務医雇用の目的

    ■ SMARTの法則の活用例

    それでは具体的に、私の目標をSMARTの法則に従って変更してみましょう。
    冒頭に書いた「法人を大きくする」という私の目標は、内容が曖昧で、具体的なゴールが見えません。いつまでに何ができれば目標達成なのかが見えづらいのです。これでは目標達成に向けて行動ができません。もちろん、行動できなければその目標を達成することはできません。そこで、「法人を大きくする」という私の目標を、SMARTの法則に当てはめて見直してみます。

    第1に「Specific=目標が明確であること」です。
    法人を大きくするという目標が明確であるかどうかをチェックします。
    ただ大きくするというだけでは、目標が明確ではなく、どのように大きくするのかが分かりません。そこで私は、「梅華会の組織自体を大きくする」という目標に変更しました。

    第2に「Measurable=測定が可能であること」です。
    目標が測定できるかどうかをチェックします。先ほど手直しした「組織自体を大きくする」という目標は、どれくらい大きくしたいのかの範囲が曖昧で、測定することができません。数字で表現できる内容で目標を立てることで、「達成できたかどうか」を客観的に判断できるようにします。例えば、「現在の2倍の診療報酬を上げる」、「常勤の医師を倍にする」というように、数値化された目標に変更します。そこで私は、「分院を増やして20院体制にする」と目標を変更しました。

    第3に「Achievable=達成が可能であること」です。
    設定した目標が私にとって達成が可能であるかどうかをチェックします。
    目標の設定は低すぎても意欲が湧きませんが、高すぎても現実味を帯びません。諦めの気持ちが湧いてきてしまい、目標達成のモチベーションが下がるためです。そこで、設定した目標のレベルは、私にとって達成可能な範囲かどうかを判断しなければいけません。
    開業してから現在までの分院を増やしてきた経緯や、運営方法を冷静に判断すると、現在の4倍の20院は私にとって少し努力すれば達成可能だと判断しました。

    第4に「Realistic=達成が現実的であること」です。
    設定した目標を達成することが、現実的であるかをチェックします。
    設定した目標のレベルが適切であったとしても、その達成が現実的でなくては意味がありません。現在の運営方法で20院とすることは決して無理なことはありません。分院を初めて作った時は苦労しましたが、今は分院を作るノウハウを持っています。したがって、20院にすることは現実的と言えます。

    第5に「Timely=達成の期限があること」です。
    最終的なチェック項目として、設定した目標に期限が設けられているかをチェックします。
    いつまでに20院体制にするのか、これは非常に重要です。なぜなら「来年までに20院増やす」と設定することは、とても達成可能とは言えないからです。しかし、20年以内と期限を設定すると、時間的余裕から、人は物事を先延ばしにする傾向があるため、まだ時間があるからとなかなか実行に移すことができません。そこで、私は2023年という期限を設けました。

    SMARTの法則の活用例

    冒頭で述べた「法人を大きくする」という目標は、SMARTの法則に従って設定し直した結果、「2023年までに法人を20院体制とする」というより具体的な目標に書き換えられました。すると、
    「その目標達成のためには、クリニックの経営状況をどのくらい伸ばせばいいのか?」
    「常勤のドクターやスタッフをどれくらい採用していけばいいのか?」
    「幹部候補生をどれくらい採用し、いつまでに育成すればいいのか?」
    「開業の候補地をどのようにいつ頃選定すればいいのか?」
    など、
    やらなければならないことが見えてきます。そればかりか、自分の健康管理にも気を遣うようになりました。とはいえ、いくら達成可能で具体的な目標設定でも、自分一人で抱えていては達成に困難を伴います。

    モチベーションを維持していくのも大変です。そこで、目標を共有し、相談や軌道修正してくれる幹部やスタッフが不可欠でしょう。場合によっては、客観的に判断してくれる外部の有識者から、アドバイスを受けることも必要なことだとお伝えしたいと思います。

    ⇒次回は「35.クリニック業務でPDCAサイクルを回すとは?」
    ※2018年に執筆したコラムに加筆修正をしたものです。

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