51. セミナーで学んだことを実践する『七つの習慣セミナー』④

第三の習慣は「最優先事項を優先する」です。
最優先事項を優先して行動するのは当たり前と言う声が聞こえてきそうですが、注目すべき点は、コヴィー博士がここで言っている最優先事項とは、重要事項でも緊急時項でもないということです。

■ トップが優先すべきは第二領域の事項

取り組むプロジェクトを緊急性と重要性の2軸で分類すると、緊急かつ重要な第一領域、緊急ではないけれど重要な第二領域、緊急だけれど重要ではない第三領域、緊急でも重要でもない第四領域に分けることができます。
この中で成功のためにトップが最優先すべき事項は緊急ではないけれど重要である第二領域の事項だとコヴィー博士は言っています。私たちの日常を考えると、我々ドクターは経営者であると共にプレイヤーでもあります。よって、第一領域や第三領域の緊急な事項に日々専念していることが多いのではないかと感じています。第四領域の緊急でも重要でもない事項を除いていくという考えも有効な方法だと思いますし、効率化から考えればすぐにでも実行しなければならないこともあるでしょう。
一方、第二領域は緊急性がないので後回しにされがちですが、放置しておくと時間が経つにつれて第一領域に移行していく事項なのです。第一領域に属してしまったら待ったなし、熟慮している暇はありません。ただの当て継ぎをするだけ、結果として次の課題や問題を残すことになりかねません。そこで、「トップは、先を見据えて第二領域に属する緊急ではないけれど重要な事項を最優先して行いなさい」と博士は言っているのです。私も開業10年となる今、クリニック経営が成功するかどうかは、第二領域に属する事項にトップが取り組めるかどうかにかかっていると確信しています。

トップが優先すべきは第二領域の事項

■ 第二領域への取り組み方

クリニックの経営にとっての第二領域に属する事項とは、スタッフの採用や教育、マニュアルづくりなどではないでしょうか。これらの事項は細切れの空き時間に取り組むことは不可能ですから、最優先して事前に時間を取っておかなければ行うことはできません。
梅華会という組織としては以前は3か月に1回、週末の2日間をかけて行う「経営合宿」を年間スケジュールに組み込んでいました。各院の院長、スタッフリーダー、経営チームと私が集まって、第二領域に属する事項を話し合います。また、スタッフ各人の私的成功のためにスタッフ全員が3か月に1回、スタッフリーダーと面談して各人の最優先事項を確認しています。

経営合宿で実際にどのような事項について話し合ったのか例を挙げれば、人事考課制度があります。日々の業務の合間の切れ切れになった時間の中で人事考課制度を纏める、ということはとても困難でした。しかし2日間かけて「なぜ人事考課制度が必要なのか」というそもそも論から話し合うことで、方向性が見えてきました。自分もそうですが、経営合宿に集まる者の認識では、人事考課制度とは昇進昇格・昇給などのための評価制度だと考えていたところがありました。しかし、そもそも論から話し合っていくうちに、人事考課制度の第一の目的は、梅華会のミッション・ビジョン・バリューを結実させることだと気づきました。皆で話し合っているうちに発想の転換が起きたのです。
人事考課制度の目的が法人のミッション・ビジョン・バリューの達成ということが明確になると、評価される項目は、法人のミッション・ビジョン・バリューの達成のために必要な項目とすればよく、それに関する評価を各人について行えばいいのではないか?という結論が導かれたのです。

第二領域への取り組み方

実際に人事考課制度を土台から組み上げていく作業には、かなり膨大な時間と労力が必要でした。しかし、私がこの膨大な時間と労力を人事考課制度につぎ込むことができたのは、第一の習慣「主体的である」が法人の各人に行き渡り、私の日常の業務をスタッフに任せることができるようになっていたからです。
現在、毎週火曜日・水曜日は私のプレイヤーとしての仕事は、完全に分院長とスタッフに任せています。その時間は梅華会の第二領域の事項への取り組みや、業界の内外の方々との人脈づくり、セミナーへの参加など、将来に備えた自分への投資の時間に充てています。
このほかの第二領域の事項への取り組みでは、耳鼻咽喉科の特性で夏季には患者さんが少なくなるので、その時期を使ってスタッフの主体性を磨くためのイベントの開催や、梅華会のビジョン・ミッションをスタッフに伝える「理事長の想いを伝える会」の開催、次年度のイベントの計画・準備も行っています。
夏季は患者さんが比較的少ないとはいえ、医療界において私は経営チームの構成員といえどもプレーイングマネージャーでもあり、現場からなかなか離れることができません。であるならば、これからも休診日である週末を使ってでも、第二領域の緊急性はないけれど重要である最優先事項に取り組んでいかなければならないと思っています。

⇒次回は「52.セミナーで学んだことを実践する『七つの習慣セミナー』⑤」
※2018年に執筆したコラムに加筆修正をしたものですので、現在は取り組んでいない運営方法・研修・教育方法などもござます。

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