54.セミナーで学んだことを実践する『七つの習慣セミナー』⑦

■ クリニック経営における2種のシナジー

公的成功のための3つ目の習慣、全体を通して6つ目の第六の習慣は「シナジーを創り出す」です。
シナジーとは、皆さんご存知のとおり相乗効果のことです。私はクリニック経営におけるシナジーには、物理的シナジーと精神的シナジーの二つがあると思っています。

■ 物理的シナジー

まず始めに、比較的容易に実践できる物理的シナジーについてお話しします。
私の法人は本院・分院を含め現在6つのクリニックで診療を行っていますが、耳鼻咽喉科を標榜する本院と3つの分院は、阪神地域に集中しています。なぜなら、コンビニなどで用いられているドミナント戦略を参考に分院を開設したためです。

ドミナント戦略とは、小売業がチェーン展開をする場合に、地域を特定してその特定地域内に集中した店舗展開を行うことで経営効率を高めるとともに、地域内でのシェアを拡大し、他小売業の優位に立つことを狙う戦略のことです。
梅華会の耳鼻咽喉科クリニックは、分院同士で患者さんを奪い合うことはない程度の距離に互いが位置し、職場や学校、地域のコミュニティーでの口コミは相互に機能する範囲での立地を意識して開設、診療にあたっています。「梅華会はお勧めだよ」という評判が、別の分院の集患にも繋がるので、各院とも患者さん満足度をアップさせるべく、スタッフ一人ひとりが努力をしているのです。
また、分院間の連携や競争意識を刺激するために、看護師によるカウンセリング件数や省エネ努力の成果を数字の上で競争し合う他、ある分院で成功した取り組みを共有し、他の分院でも取り入れるような仕組みづくりも行っています。また、各院で診療に格差ができないように、スタッフを相互で入れ替えるなど、人事面でも工夫を行っています。このように複数のクリニック間でシナジーが生まれているので、法人として順調に発展し、小児科を標榜する分院が2院、東京には消化器内科を専門とする分院を開設するまでに至りました。

本年東京に分院を開院したのは、ミッションである「医療を通して日本の未来を明るくする」という目標を達成するためです。法人がある程度発展した現在、阪神地区にとらわれることなく、全国に展開する必要があると考えました。
MAFを通して全国各地の先生方とお会いし、互いに刺激し合いながら、医療を通して日本の未来を明るくするとともに、自分自身でも全国に向けて積極的に行動しようという気持ちが強くなったのです。

■ 精神的シナジー

さて、もう一つの精神的シナジーに話を戻しましょう。これは私一人が頑張ってもどうにもならない上に、時間がかかる課題です。コヴィー博士は「二人の人間が全く同じ意見を持っているとすれば、その一人は余分である」と言っています。私がスタッフに望んでいることは、信頼関係を築いたスタッフ同士が心を開いて自己開示をし、より質の高いミーティング・対話を通して相乗効果を発揮することです。
イエスマンばかり集めて法人経営をしようとはさらさら思っていません。

お陰様で2008年に最初のクリニックを開院して以来、多くの人材に恵まれて順調に発展してきたと思っていますが、自分も含めて構成員の一人ひとりの能力が他のクリニックに比べて大きく優っていたとは思っていません。ただ、お互いが信頼関係で結ばれているという点ではどこにも負けないと自負しています。梅華会はお互いの信頼関係が築かれた環境にあるので、スタッフ一人ひとりが自分の想いや考えを発言でき、周りのスタッフに伝えることができていると感じるのです。そのような信頼関係ができあがると、他の人と違う意見、反対の意見を言ってみることも可能になります。その意見を聞いた周囲は、その意見をまず受け入れて、そして考え、今より良い取り組み・より良い方法を考え合い、再構築することができるのです。

私は、梅華会の中でシナジーが生まれた瞬間を何度も見てきました。私は、法人のスタッフには「七つの習慣」を自らが実践して見せ、スタッフにもその習慣を身につけるよう指導しています。ですから、スタッフ一人ひとりは、今までお話ししてきた、第一から第五の習慣を実践しています。その成果から、目的意識を持って主体的に働くスタッフが育っています。そして、スタッフ同士にもシナジーが生まれています。各スタッフが定めた目標とその達成度は、年1回、全員の前で発表し共有しています。そのことによりお互いに刺激し合い、お互いに相手を応援し合う土壌が確実に育っています。
現在では、これが梅華会の風土・文化となり、私が特に働きかけなくても、それぞれが「七つの習慣」を実践し、成長していて頼もしい限りです。これこそが、第六の習慣「シナジーを創り出す」ことなのではないでしょうか。

⇒次回は「55.セミナーで学んだことを実践する『七つの習慣セミナー』⑧」
※2018年に執筆したコラムに加筆修正をしたものですので、現在は取り組んでいない運営方法・研修・教育方法などもござます。

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