50. セミナーで学んだことを実践する『七つの習慣セミナー』③

■ 終わりを描くところから始める

コヴィー博士が唱えた成功のための『七つの習慣』。
第二の習慣は「終わりを描くところから始める」です。考えてみれば、人生や企業経営の成功というように長期的で大きな目標ではなく、もっと身近なことを行うときは、目的を達成する時点から逆算して計画を立てていると思います。そのため、自分の人生の成功という長大な目的を達成するためにも、終わりを思い描く必要があるのは当然のことでしょう。しかし、特に若い時は人生の集大成にまで考えが及ばないのが普通だと思います。ですが、人生の目標達成のためにもその人生の集大成を思い描いて、それなら今何をすべきかを考えるのが重要ではないでしょうか。
私は、この第二の習慣を目にしたときにハッとさせられたのを今でも覚えています。

終わりを描くところから始める

■ クリニックが目指す方向

クリニック経営に関してお話しすると、今から10年前の開業時も5つの基本理念を掲げてスタートしました。目の前の診療だけに捉われて毎日を過ごすのではなく、大局に立って日々を過ごすことで軸のぶれないクリニック運営が行えると考えたからです。当時の基本理念は次のような内容です。

  1. 1.社会へ貢献する名誉ある役割を担い責任を果たす
  2. 2.感謝し感謝される心を持つ
  3. 3.笑顔で楽しみながら働く
  4. 4.礼儀正しく誠実に徹する
  5. 5.職員個々が夢を持ち常に自己の改善に努める

この5つの項目を見てみると、これらは私のクリニックで働くメンバーの行動指針や哲学といったもの、つまりバリューであって、ミッションやビジョンではありませんでした。当時も私は漠然とミッションやバリューといった想いを持ってはいました。けれど、具体的にスタッフたちに公言するまでには至りませんでした。まだその思いが漠然としていたということもありますが、一番の理由は、あまりにも大きなことを掲げてスタッフに「院長はまた変なことを言っている」とか、「大きなこと言っているけど、とてもついていけない」と思われることを恐れていたのかもしれません。ですから、開業後、お陰様で業績は順調に伸びていったにも関わらず、このクリニックがどこへ向かっていくかについてはコミットメントできていませんでした。
一方で、私はスタッフたちに第一の習慣「主体的である」を求めていました。しかし、クリニックが何を目指しているのかをコミットメントできていなかった訳ですから、いくら私が「自分で考えて行動を起こせ」とスタッフに言ってみたところで、そうなれなかったのは当たり前のことでした。

クリニックが目指す方向

■ ミッション&バリューの策定

そう気づいた私は開業5年にして、ミッションやバリューを公言しました。つまり、「日本の未来を医療を通して明るくするために、日本一のモデルクリニックになる」と宣言したわけです。
スタッフたちからは「話が大きすぎてよく分からない」という反応が返ってきたのを覚えています。将来を悲観的に捉えることが多い昨今ですが、子どもを持つ父としても、医師としても、これからの日本を担う子どもたちに明るい未来を残したいというのが私の偽らざる気持ちです。つまりこれが私の、そして梅華会のミッションなのです。そして、そのミッションを果たすためのビジョンが日本一のモデルクリニック、具体的にはスタッフが主体的に生き生きと働ける環境をつくることなのです。

ミッション&バリューの策定

■ ミッション&バリューの共有

当初、「話が大きすぎてよく分からない」と言われた法人の将来像をスタッフと共有するために行っている取り組みがあります。
年に1回開く「理事長の想いを伝える会」です。4月に入職した新人スタッフも仕事に慣れ出した7月に開いています。
「理事長の想いを伝える会」はその名のとおり、私の想いをスタッフたちに伝えることを目的にしています。加えて、入職年次ごとにチームを作って研究発表を行い、診療所ごとに練習したパフォーマンスを披露することで、第一の習慣「主体的である」の実行の場ともしています。この会を開く前にも、入職時の研修はもとより、ことあるごとに、先輩スタッフから様々な形で梅華会の目指すところを伝えてもらうようにしていますので、この時期に直接私が想いを伝えることで、一人ひとりの理解がより進むのではないかと思っています。
また、年1回開催している目標設定会では、チームとしてではなく、スタッフ一人ひとりの1年後の自分の姿を描くことで、目標達成への取り組み方を身に着けてほしいと思っています。そこで出る目標は「本を1年に24冊読む」とか「クラークとして1日に80人の患者さんの対応をする」とか、結構具体的で現実的な目標がほとんどです。従って私個人としては内心「もっとでっかい目標を掲げてほしいな」と思ってはいるのですが、これはスタッフ一人ひとりが自分の人生の集大成を描けるようになるための第一歩と捉えています。

そして、トップである私が向かう先を示すことが、梅華会にとっては何より重要です。私の描く終わりをスタッフに伝え続け、スタッフ一人ひとりがコミットメントして、それに向かって主体的に行動してくれること。そういった組織を目指して今も努力を続けています。

⇒次回は「51.セミナーで学んだことを実践する『七つの習慣セミナー』④」
※2018年に執筆したコラムに加筆修正をしたものですので、現在は取り組んでいない運営方法・研修・教育方法などもござます。

開業医コミュニティM.A.Fではクリニック経営についての情報発信、セミナー開催など行っております。最新のM.A.Fからの情報を得るために無料のメールマガジンにご登録ください。