私のFBを御覧の皆さまはご存知だと思いますが、5月に入ってから私は年の初めに掲げた今年の目標のうち、いくつかの目標にに取り組んできました。
大きなものを挙げれば、一つはトライアスロンへの参加です。次回に向けて努力すべき点がハッキリした収穫ある大会でした。そして、もう一つはオーストラリアの都市、ケアンズでの自己研さんのためのセミナー参加です。
継続的に参加しているセミナーですが、毎回新しい発見があり、また、自分への課題が見つかり、世界中の方々と大変有意義な時間を共有させていただきました。毎年、約1週間をかけて参加するこのセミナーですが、日々診療に追われている皆さんは、まとまって現場を離れることに抵抗を感じるかもしれません。しかし、私が現場を離れても日々の診療には影響がない、という環境を構築してきた結果として、1週間現場を留守にしても問題ない環境になったのだと思っています。
■「七つの習慣セミナー」への参加
そして、トップである私が居なくても困らない環境を作ることに私が力を注いだのも、開業間もない頃に「七つの習慣セミナー」に参加したことに端を発しています。今の私のクリニック運営の原点は、コヴィー博士の著した『七つの習慣』であり、そのセミナーに参加し、そしてそれを実際に活かしてクリニック運営を行ってからのことになります。
世の中には、様々な自己啓発のセミナー、経営に関するセミナーが溢れていますが、どんなに優れたセミナーに参加したとしても、帰ってきて自分の生活やクリニック運営に取り入れないのであれば、参加した意味がありません。そして、セミナーに参加してはみたものの有意義に活用できていない方や参加したこと自体に満足して活用しようとさえ思っていない方、そんな残念な方を目にすることも少なくありません。よって、今回から何回かに分けて、私が「七つの習慣セミナー」で学んだことを実際のクリニック運営でどのように実践し活かしているかを紹介していこうと考えました。
■『七つの習慣』とは?
初回の今日は、まずもって『七つの習慣』とは何かをお話ししたいと思います。
『七つの習慣』のベースには「インサイド・アウト(内から外へ)」という考え方があります。これは、人が真に成功し幸福になるためには、優れた人格を持ち、自分自身の内面(インサイド)から外(アウト)に働きかけることが重要とする考え方です。つまり、受動的に人から影響を受けるのではなく、能動的に人に影響を与えるような人になりなさいということです。
「七つの習慣」は全体が大きく3つ、
①私的成功、②公的成功、③再新再生に分類されています。そして、それぞれは次のような習慣から成り立っています。
①私的成功:第一の習慣⇒主体的である
第二の習慣⇒終わりを思い描くことから始める
第三の習慣⇒最優先事項を優先する
②公的成功:第四の習慣⇒Win-Winを考える
第五の習慣⇒まず理解に徹し、そして理解される
第六の習慣⇒シナジーを創り出す
③再新再生:第七の習慣⇒刃を砥ぐ
※ここに出てくる「習慣」という言葉は、本の中に引用されているアリストテレスの次の言葉から来ています。
「人格は繰り返す行動の総計である。それゆえに優秀さは単発的な行動にあらず、習慣である」
■「私的成功」を達成する習慣
そして、第一の習慣から第三の習慣までは「私的成功」を達成するものと位置づけられ、依存から自立への成長を促すものであり、その第一歩は第一の習慣「主体的である」です。言い換えると人は誰でも「自分の反応を選択する能力」を発揮することができるということです。これはどういうことがと言うと、例えば他人の発言で不愉快になることもあるが感動することもある、このような自分の反応は意識せずとも自分で選択をしています。つまり、嫌々仕事をしている時も、ワクワクと楽しんで仕事をしている時も、どちらも気づいていなくても自分で選択してその反応をしているということなのです。
この自分の反応の仕方を主体的にコントロールし、周りの状況に左右されることなく率先して状況を改善する行動を起こすことが、私的成功のための最初に求められる習慣だとコヴィー博士は言っています。
第二の習慣は「終わりを思い描くことから始める」です。
このことは、自分がなりたい人生の最後の姿を思い描きながら、そうなるための自分の信条を書き出すことを勧めています。自分はどうありたいのか?自分の行動の基礎となる価値観や原則を文章にし、これを全てのものごとを計る「ものさし」としなさいと博士は言っています。
第三の習慣は「最優先事項を優先する」です。
第二の習慣で決めた自分のなりたい姿を実現するためには、書き出した信条に照らし合わせて「最優先すべきこと」を優先的に行うことが必要です。その為には時間管理が求められます。単に「緊急なこと」に振り回されることなく、また「重要でないこと」に流されることなく、「重要なこと」を優先しなさいと言っています。
■「公的成功」を達成する習慣
次に、第四の習慣から第六の習慣は「公的成功」を達成するための習慣と位置付けられています。これは、私的成功を土台として得られた信頼を元に他との協力体制を築き、より大きな成果の達成を目指すことです。
まず、第四の習慣「Win-Winを考える」とは、ある物事に関わる当事者全員が望ましい結果を得て、満足できる状態を目指すことを習慣としなさいと言っています。どちらか一方に有利というWin-Loseの考え方や、すべて先方のいうとおりにというLose-Winの考え方を超克した先に存在するものです。ここで重要なのは、もし万が一、双方のWin-Winを実現できない時には、勇気を持ってNo Deal(取引しない)を選択すべきとしていることです。
次に第五の習慣「まず理解に徹し、そして理解される」とは、自分のことを理解してもらう前に、相手のことを理解しようとする習慣です。本当の意味でお互いが理解し合う為には、相手を評価したり、探ったり、一方的に助言しようとしたりせず、相手に感情移入し、相手の目を通して物事を見つめることだと言っています。そのために最も効果的で具体的な方法は、相手以上に相手の立場をうまく説明しようとすることだそうです。
第六の習慣「シナジーを創り出す」では、博士はシナジー(相乗効果)を「全体の合計が各個の和よりも大きくなること」としています。
チームは1+1を2よりも大きくする創造的な協力体制を目指しなさいというものです。通常、何の土台もなく相乗効果のある人間関係を目指そうとしても、防衛的な本能が働き、相乗効果が発揮できるのは稀と言われています。そこで、全ての当事者が「私的成功」を備えた上で、第四・第五の習慣を実践し、協働することの不愉快さや不安に打ち勝って、自分と相手との相違点を尊ぶことができた時、初めて相乗効果が生まれくると言っています。
■ 再新再生
そして、最後は「再新再生」とされる第七の習慣「刃を砥ぐ」です。
これは他の全ての習慣を支える、人生の基本的な四つの側面の維持について説かれています。
①肉体、②精神、③知性、④社会・情緒、の四つの側面にバランス良く取り組むことで、自分自身という最も大切な資源を維持することができると言っています。
①の肉体とは、食事と休養と運動に取り組み、主体性を発揮できる高いエネルギーを手に入れることです。
②の精神とは、揺るぎのない穏やかで明朗な心を持つ事です。
③の知性とは、読書をはじめとして先人たちの知恵や知識や思考法を学び、適切なアウトプットによって知的側面の刃を砥ぐことです。
そして④の社会・情緒とは、社会における良好な人間関係を築くことで、情緒的な安定を得ることです。対外的な安定は情緒的な安定と深く結びついているからです。
以上が、コヴィー博士が著した『七つの習慣』のアウトラインです。本書は是非皆さんにも読んでいただきたい書籍ですが、次回からはこれに啓発された私が実践したことを具体的にお話ししたいと思います。
⇒次回は「49.セミナーで学んだことを実践する『七つの習慣セミナー』②」
※2018年に執筆したコラムに加筆修正をしたものですので、現在は取り組んでいない運営方法・研修・教育方法などもござます。
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