46. 分院の開設に大切なこと

■ 分院開設のきっかけ

2018年4月、6院目の分院となる「梅華会わくわくこどもクリニック」を開設しました。小児科としては「うめはなこどもクリニック」に次ぐ2院目の開設です。
私が最初の分院の開設を考えたきっかけは、おかげさまで1日当たりの患者さんが多い時では200人にも及んだことです。患者さん1人に対する診療時間が短いと言われる耳鼻咽喉科ですが、1日に200人来院すると一院では到底患者さんの満足度を維持することができないと考えたからです。
病気を治すのは患者さん自身であって、私たち医師はそのサポート役に過ぎません。治癒のためには、患者さんご自身が病気について理解を深め、自らが治す努力をされることが最重要だと考えます。私の専門とする耳鼻咽喉科では、3時間待ちの末、診療時間が1分間なんてことも少なくないと言われます。しかし私は、患者さんにご自分の病気のことをしっかり理解していただくためには、患者さんがしっかり理解できるまで、分かりやすく説明する必要があると思うのです。そして開業時も今も、クリニックと患者さんが信頼関係を作ることが患者さんの満足度を上げることに繋がると考えています。

分院開設のきっかけ

■ 分院開設で重要なこと

さて、いざ分院を開設するとなると、スタッフの増員とそのマネジメントなど、所帯を大きくすることにより当然新たな課題が色々と出てきます。その中でも私が最も重要視し、こだわっていることは、梅華会グループどのクリニックでも患者さんに満足いただける医療を提供すると言う事です。「医療を通して日本の未来を明るくする」という私の理念の共有もそうですが、もっと現場目線で患者さんに寄り添う医療を貫くこと、そして ”同じ病気に対する治療方針も梅華会すべてのクリニックで徹底・統一したい” と思いました。複数のクリニックを展開する上では、医療の質を統一することは不可欠と考えているからです。

私の分院の常勤医は、私と出身の大学や医局が異なりました。そして、医師は出身医局により治療方針が多少異なるのはご存知のとおりです。「A先生は○○がいいと言ったのに、B先生は××がいいと言った」という状況が生まれてしまっては、患者さんが混乱してしまいますし、梅華会の診療に対して不信感を抱かれると思うのです。ですから、梅華会の医師の間では、患者さんを惑わせないよう、「Aのケースではどのように対応する、Bの場合だったらこうする」など、本当に細かい具体例を挙げて、一貫性を持って治療に当たれるよう、毎月考え方のすり合わせを行っています。
これは医師に限ったことではありません。梅華会では看護師等の常勤スタッフは一つのクリニックに固定せず、複数のクリニックを移動して勤務する体制を取っています。クリニックの患者さんへ提供する医療の質を統一するためには、むしろこちらの方が重要かもしれません。患者さんと接する時間は医師よりもスタッフたちの方が長いからです。また私は、自分の目が届かない分院ごとにローカルルールができるのを防ぎたいと考えました。そこで医師以外のスタッフは、ローテーションを組んで各分院を回ることとしたのです。
提供する医療の統一は、各院の医師が話し合ってすり合わせさえ行えば、皆がほぼ同じレベルなのでさほど問題ではありません。しかし、スタッフは経験も技術も様々です。その様々な個人がチームを組織して業務に当たるわけですから、固定のメンバーでチームを組むとどうしてもバラつきが出てしまいます。そこで、スタッフの固定化を止めました。

分院開設で重要なこと

■ 経営・企画部門設置のメリット

そのほか、他のクリニックではあまり見ないと思いますが、医療関係者以外のスタッフもたくさん雇っています。私が経営だけに専念できないので、法人の中に経営・企画部門を作りました。例えば、その中の「マネージャー」についてご紹介しましょう。
私には診療中は分院の様子は全く分かりませんし、知る術も持っていません。そこで、マネージャーは分院を巡回訪問し、各分院の日常業務を確認してもらっています。そこでスタッフの意見の吸い上げを行い、それらを集約して私に報告を上げる仕組みになっています。この方法を行ったところ、私一人では目が行き届かない点を充分にカバーしてもらえていると感じています。この経営・企画部門を設置したことで、まだまだではありますが梅華会のガバナンスも随分整ってきたのではないかと感じています。

これから開業するという方だけでなく、これから分院を作ろうかと考えていらっしゃるドクターの方も、どうぞ、梅華会に見学に来てください。恐らくは何がしかのヒントを提供できると思います。また私はクリニック経営の様々な課題が話し合えることを望んでいます。

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経営・企画部門設置のメリット

⇒次回は「47.クリニック業務のIT化」
※2018年に執筆したコラムに加筆修正をしたものですので、現在は取り組んでいない運営方法・研修・教育方法などもござます。

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