45. 患者さんの待ち時間対策

耳鼻咽喉科やアレルギー科の待合室が患者さんで溢れる、花粉症の季節がやってきました。私は患者さんの増加に伴って同一生活圏内に分院を一つ、二つと増やしてきましたが、それでもやはり、この季節の耳鼻咽喉科は、患者さんにお待ちいただく時間が通常より長くなってしまいます。耳鼻咽喉科を主とする梅華会は春を待つ時期が繁忙期なのですが、他の診療科でも繁忙期は必ずあると思います。
そんな中で、お待ちいただく患者さんに満足いただくための私のクリニックの取り組みをお話ししたいと思います。

■ 待ち時間短縮施策:予約システム

まず、一つ目は待ち時間を少しでも短くするために予約システムを導入することです。同時に時間帯による混雑状況とおよその待ち時間をホームページで確認できるようにしています。歯科クリニックでは一般的となっている予約システムも、医科クリニックでの導入はまだまだ進んでいないように思います。
夫婦共稼ぎが当たり前になりスマホも普及した昨今、患者さんのことを第一に考えれば、予約システムを活用するのはごく自然だと思います。ただし、ネットをあまり使用されない患者さんもおられるので、そのような方専用の枠をあらかじめ確保するなど、受付での柔軟な対応も必要になります。

待ち時間短縮施策:予約システム

■ 待ち時間短縮施策:問診票ダウンロードシステム

このほか、待ち時間を短縮するためには、診療の流れを工夫する必要もあります。多くのクリニックでは初診の患者さんには受付で問診票を記入してもらうと思いますが、梅華会では事前にホームページから問診票をダウンロードできるようにしています。(※現在は、紙のダウンロードに加え、WEB問診も導入しております)

初診の患者さんはホームページを御覧になって来てくださる方が多いので、その際に事前に問診票をダウンロードし、記入を済ませてから持参していただくようにしているのです。受付で問診票をお渡ししてから、時間を掛けて記入・提出、それを受付担当が電子カルテに入力、となると、新患が多い場合はここで渋滞が起きてしまいます。よって、問診票を記入して持参するというだけの些細なことでも、繁忙期の待ち時間の短縮には大きな効果があると言えます。

待ち時間短縮施策:問診票ダウンロードシステム

■ 待ち時間短縮施策:診療時間の短縮

また、診療時間を短縮することで患者さんの待ち時間を短縮できるとも思っています。医師は診療に専念し、電子カルテへの入力や医師でなくても説明できることはスタッフに任せています。しかし、そのためには、看護師だけでなくすべてのスタッフに治療に関する知識を習得してもらう必要があります。そこで、梅華会では毎月1回勉強会を開いています。
新卒者へはもちろんのこと、新しい治療を取り入れたら、すぐにスタッフ全員に勉強してもらっています。当初は私自身が講師をしていましたが、今では勤続年数の長いベテランスタッフに講師を任せられるようになってきました。

待ち時間を「学びの時間」に

■ 待ち時間を「学びの時間」に

以上の前提で、私はクリニックでの患者さんの待ち時間をただ何となく過ごす無駄な時間ではなくて、患者さんが病気について学ぶ有効な時間と捉えていただけるよう、様々な取り組みをしています。患者さんの待ち時間=無駄というマイナスのイメージを、ご自分の病気について理解する「学びの時間」と思えるプラスのイメージにしていただきたいと思っているのです。
その取り組みの一つが、疾患ごとの症状や原因、治療などについて書いたリーフレットを約30種類用意していることです。
大学病院などでは、よく製薬会社が作成したリーフレットを置いています。しかし梅華会では、それらを参考に私のクリニックの治療方針に沿って患者さんに分かりやすいよう工夫したオリジナルのリーフレットを作りました。もちろん、最初から30種類も用意できたわけではありません。最初は患者数の多い中耳炎やアレルギー性鼻炎などの疾患から徐々に作っていきました。その積み重ねで現在約30種類に至ったというわけです。

採用サイトの役割

ある研究によれば、いくら丁寧に医師が説明しても、患者さんの多くはクリニックを一歩出たとたんにそのほとんどを忘れているそうです。帰宅後「あれ?」と患者さんがならないためにも、口頭で説明するだけではなく、必要な時に注意点などを自宅で確認できるリーフレットは有効だと思って作成しました。しかし、待合室で熱心にご覧になっている患者さんがたくさん見受けられました。つまり、思いもよらぬところでリーフレットが待ち時間対策になっているわけです。さらに、待合室でリーフレットを見ることは診療前にいわば病気について予習をしておくようなもの、診察時の説明がスムーズに行えるという効果もあります。
また、リーフレットを補完するツールとして、、タブレット端末で見られる説明動画も作成しました。イラストを中心に視覚的に説明することで、より分かりやすくなっていると思います。タブレット端末は、診察後のスタッフが行うアフターカウンセリングで使用するほか、一度使い方を説明すればご高齢の方やお子さんでも簡単に操作できるため、待合室やネブライザー治療の時に患者さんが手に取れるように配置しています。リーフレットを読むのは面倒だとお思いの方にも気軽に学んでいただけているようです。
一般的には、待ち時間対策というと、テレビから流れるワイドショーや漫画、週刊誌の設置と考えがちですが、患者さんに楽しんでもらいながら自身の病気を学んでもらう取り組みも、一考の価値があるのではないでしょうか。

⇒次回は「46.分院の開設に大切なこと」
※2018年に執筆したコラムに加筆修正をしたものですので、現在は取り組んでいない運営方法・研修・教育方法などもござます。

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