44. クリニックのホームページを考える

■ ホームページは何のためのツール?

私の法人は現在、ホームページをより良くするための見直しをしています。
私は拙著『クリニック開業ロケットスタート』の中で、開業から約3年目にホームページを再構築した方が良いとお伝えしています。それはその時だけに限ったことではなく、クリニックのホームページは常により良いものに更新していく必要があると思っているためです。
開業当初は患者さんを集めるための一つの宣伝ツールとしての役割が大きいホームページですが、患者さんにとって有益な情報を発信するツールとして、また、クリニックに相応しいスタッフに入職してらうためのツールとして、徐々に役割が広がり、様々な目的で活用することができるようになります。
私の経験から言わせていただくと、例えば、既存の患者さんに有益な情報を発信する目的で作ったページでも、そのページを見て新しい患者さんが来院されることも多いのです。そういったことからクリニックにとって、ホームページは患者さんを増やす宣伝ツールとしての機能も持っていることになります。

ホームページは何のためのツール?

■ 採用サイトの役割

現在私の法人では、スタッフの採用サイトの再構築に力を入れています。
少子化も進んでいる現在、景気が上向きになるのと並行して就職は売り手市場と報道されています。新卒者は引く手あまたの時代がやってきているのです。ですから、自分のクリニックで働くのにふさわしい、優秀で、性格が良く、向上心も高い、そして何より私の理念や理想を理解し共有してくれる。そんなスタッフに梅華会に就職したいと思ってもらうには、何かしらの手を打つ必要があると思うのです。

人事スタッフには就職説明会などにも積極的に出向いてもらい、梅華会の目指すところ、雰囲気、待遇等を余すところなくアピールしてもらっています。しかしそれ以外に、梅華会をさらにアピールできる方法はないのか、幹部たちと話し合いました。
お陰様で多くの方に就職試験を受けていただいている状態ではありますが、一方でその試験にかかる梅華会のスタッフの労力も多大なものとなります。大勢の方と面接を行うのも本当に大変です。そこで、そもそも梅華会の理念や理想と合わないだろうと思われる方に応募を遠慮していただくにはどうしたらよいのか、ある意味個性的な私のクリニックの運営に共感してくれる方に応募してもらうにはどうしたらよいのか、併せて考えました。
私の法人はすでに採用サイトを構築して、どのような人材を求めているか、現場のスタッフたちはどんな様子かなどを部署ごとに発信しています。話し合いの結果、梅華会の想いを分かりやすく発信するために、再度その採用サイトを手直しすることを決定しました。そしてまず初めに、私がスタッフに求めるものを明確に応募者に伝えるために「私からのメッセージ」を書き直したのです。
採用サイトでは、募集する職種ごとに求める人物像などを記載していますが、私自身のメッセージの中でも、私がスタッフに求めるものを職種ごとに書きました。正直に、こんな方は募集を諦めてくださいといった厳しい話も書きました。

私は、就職は結婚と似ていると思っています。
相思相愛でないとうまくいかないのです。特に新卒者の場合、社会人としての初めての職場は今後の人生に大きく影響を与えます。それだけに採用する側の私の責任は相当重いと受け止めていますが、入職する側にもそれなりの覚悟をして就職して欲しいのです。「給料は他より高そうだな」「福利厚生も充実していそうだな」というように待遇面だけを見て安易に就職を希望してほしくないのです。
「社会人としてもさらに勉強を続けられるな」「努力すればリーダー、サブリーダーとしてさらに活躍できるな」といった向上心を持つ人に就職してほしいのです。そしてその大前提として、私と、そして梅華会のミッション・ビジョン・バリューを理解し、共有し、一緒に進んでいける人をチームの一員に迎えたい。そんな想いもしっかり書き込みました。
もう一つ、この就職サイトには、スタッフのブログも載せています。
梅華会は1年を通じて様々なイベントを行います。(もちろん強制ではありませんが)資格に挑戦したり、マラソンに参加したりもしています。そんなスタッフの生の声をブログで聞いてもらうことが、その時の様子やスタッフが感じたことを読んだ方に一番分かってもらえるのではないでしょうか。また、日常業務の現場の雰囲気も、ブログからスタッフの視点で伝えてもらうことが一番だと思っています。
そのブログを見て、「通常の業務以外にこんな活動があるのは嫌だな」、「仕事とプライベートはしっかりと区別したいな」と感じた人には応募を諦めてもらった方が良いと思っています。
このコラムを読む皆さんのお考えや皆さんのクリニックの目指すところは、様々でしょう。ですが、皆さんの考えや目指すところを理解し、共有できる人たちとチームを組めることが、さらに組織の力を高め、クリニックを発展させていくことに繋がるのです。

採用サイトの役割
※2023年には2回目リニューアルを実施

■ 常に新しい情報を発信

また、患者さんにとって有用な新しい情報は常に載せるようにしています。
例えば、ダニの舌下免疫療法で用いる「ミティキュア」は、12歳未満のお子さんでも7歳以上なら保険適応で処方できるようになりました。今までは対処療法のみで凌いでいたお子さんにとっては朗報です。今の目覚ましい医療進歩に遅れないよう、常に新しい情報を発信するためにホームページを手直しすることも、とても重要と考えます。この情報も一日も早く発信できるよう、現在も作業を進めています。

皆さんも現在のホームページを患者さんの視点に立って、もう一度確認してみてください。
分かりにくいところはないでしょうか?大事な情報がすぐに見られるようになっているでしょうか?そして、クリニックの医療方針、先生の目指すところを発信できているでしょうか?
今一度、ホームページの役割について考えてみることをお勧めします。

⇒次回は「45.患者さんの待ち時間対策」
※2018年に執筆したコラムに加筆修正をしたものですので、現在は取り組んでいない運営方法・研修・教育方法などもござます。

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