41. クリニックに相応しいスタッフになってもらうために⑤

■ 地域イベント

私のクリニックでは、地域の皆さんと信頼関係を築くために様々なイベントを行っています。例えば、2011年から行っている「ハロウィンパーティー」では、大道芸人を呼んだり、簡単なクイズを出題したりしています。地域の皆さんに病気以外の時でもクリニックに足を運んでいただくことで、実際に病気でクリニックに来た時のコミュニケーションの取りやすさに繋がればいいと思い始めました。また、小さなお子さんの「病院やクリニックは大嫌い…」という先入観を少しでも緩和できれば、私たち医療を提供する側だけでなく、保護者にとっても役に立つと考えたのです。クリニックのスタッフたちがそれぞれ趣向を凝らした衣装を着て、お子さんをはじめとする地域の皆さんに楽しんでもらっています。
この「ハロウィンパーティー」には、地域の皆さんとの交流でお互いの信頼関係を築くという直接的な目的だけでなく、実は、準備から開催までの経験を通してスタッフの成長を図ろうという目的もあります。私が兼ねてからお話ししているように、クリニックが発展するためにはスタッフの主体性が大事です。現在では、ハロウィンパーティーをはじめとする様々なイベント開催の計画から実行、そして反省まで、すべてをスタッフに任せています。丸投げです。
もちろん、私が忙しいからということもありますが、イベントの準備段階にスタッフ全員が関わり、知恵を出し合い、考え行動に移し、イベントを成功させる…というプロセスにより、スタッフ一人ひとりの責任感が強くなり成長することができます。加えて、この成功体験が自信に繋がる、さらには、一緒に働くスタッフたちの結束が強くなるというメリットがあります。

私はクリニックで働く者として、他人を思いやり、共感し、愛するということがもっとも重要なことだと思っています。そうなるためには、まず自分を肯定的に愛する人であるべきだと考えます。様々なイベントで得た達成感や自信は自尊心に繋がり、ひいては己を愛することに繋がると思うのです。
また、イベントでは各スタッフが責任を持って活躍する場があり、全員がリーダーシップを問われます。そのため、必然的にリーダーシップを養う機会になるとも思っています。

地域イベント

■ セールスの難しさ

クリニックのイベントのひとつとして、地域のお祭り「芦屋サマーカーニバル」で屋台を出店しました。この出店は商品企画から販売するための人員配置、仕入れ、入金管理などすべてを新卒スタッフに任せました。私は、物を売ることの大変さを新卒スタッフに感じ取って欲しかったのです。私たち医療業界の人間はセールスが苦手、あるいは、あまり良いことと思っていないのではないでしょうか。しかし、私は相手に納得していただいて商品やサービスを買っていただくセールスは、高度な知識や技術が必要な行為だと思っています。
医療の提供はこちらから強く勧める性質のものではありませんが、もし、患者さんに適していて本当に良いサービス、つまり良い治療であるなら、そのことをしっかり伝えるべきです。従って、私のクリニックのスタッフには、患者さんに対面した時に、ドクターが提供する治療に対する理解と知識を持って、自分の信じる医療サービスをしっかりセールスできるようになって欲しいと思っています。
そんな願いから、新卒スタッフにお祭りの屋台出店を任せています。いつも赤字ですが、新卒スタッフが何かにチャレンジし、達成感を味わい、セールスの難しさを経験するという良い機会になっています。

これまで、いくつかのイベントをスタッフが企画し実行してきましたが、すべてが大成功だったわけではありません。しかし、イベントは失敗に終わっても、新しいことを行う度に一人ひとりに何かしらの学びがあったと感じます。スタッフにはこれからも新しいイベントを企画して実行していってほしいと思いますし、私にできることがあれば何でも協力しようと思っています。

セールスの難しさ

■ イベント実施上の留意点

これを読んで「自分のクリニックでもイベントをやってみようかな…」とお思いの先生方にひとつ注意していただきたいことをお伝えします。初めてイベントを開催するときは、規模の小さなイベントをクリニックが比較的暇な時季を選んで行うのが良いということです。最初から大きなイベントを行うのはスタッフには荷が重いでしょうし、準備も大変です。また、いきなりスタッフに丸投げという訳にはいきませんから(梅華会でも最初は私が率先して行動する必要がありました)、イベントは患者さんの少ない閑散期に行うことをお勧めします。
最初は手間がかかり、「イベントはもうこれきりにしようか」と思うでしょう。しかし、普段と異なった状況でスタッフが活躍することで、お互いに思いがけない発見があり、さらに信頼関係を築くことができ、チームとして楽しく仕事できること間違いないしです。
そして、そのことはスタッフの成長にもやりがいにも繋がっていきます。私は、笑顔で楽しく働くスタッフこそ、私のクリニックに相応しいスタッフだと思っています。

⇒次回は「42.クリニックに相応しいスタッフになってもらうために⑥」
※2018年に執筆したコラムに加筆修正をしたものですので、現在は取り組んでいない運営方法・研修・教育方法などもござます。

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