40. クリニックに相応しいスタッフになってもらうために④

スタッフ教育と聞いて皆さんがまず思い浮かべるのは研修ではないでしょうか。研修というと、まず入職時に行う新人研修がありますが、ここではすでに働いているスタッフにより一層活躍してもらうための研修を取り上げたいと思います。

■ 「心のあり方」研修

梅華会で行っている研修の中でとても大事にしているのは、「心のあり方」についての院内研修です。これは、即効性を求める研修ではなく、じっくりと時間を掛けてスタッフの人間性を高め、人としての成長を促す研修です。もちろん、電話対応や、患者さんへの接し方というようなテクニカル(表面的)なことも大事です。しかし、患者さんに信頼していただくためには、このような表面的なこととは別にもっと根底にある心の部分がより重要だと考えています。
この研修では、梅華会で働く先輩スタッフが講師を務めます。研修を通して、スタッフが主体的かつ自律的な人間となり、それぞれの持ち場で心を込めて明るく、患者さんが求める働きをしてくれることを目的としています。私は、この研修を続けてきた成果が徐々に表れてきていると実感しています。

以前は、自己啓発のための外部研修を取り入れていました。この外部研修は優れているから参加したほうが良いと判断し、強制的にスタッフを外部研修に参加させたこともありました。しかし、スタッフには研修を受けたという事実だけが残り、そこでの学びは身につかず、その研修の成果を感じることはできませんでした。この経験から、私がいくら優れた研修だと判断しても、研修に参加するスタッフがその目的を理解せずに参加していたのでは成果となって現れないということが分かりました。

「心のあり方」研修

■ 研修の成果を上げるには?

「どうすれば研修の成果を上げられるか?」
行きついた答えは、研修に参加する本人が興味を持ち楽しんで参加しなければ、たとえ内容の濃い研修でも身につかないということです。外部の方の話を聞くよりも、梅華会で働く先輩スタッフに、身の回りでよく起こる「あるある」を題材として研修してもらう方がずっと成果が上がるのです。最近では、講師となる先輩スタッフが、より楽しめる内容を院内研修に織り込み、クリニックのスタッフとしての心のあり方が自然に身につくように取り組んでくれています。
また、梅華会では研修旅行も行っています。例えば、行き先をディズニーランドにした場合、みんな喜んで参加してくれます。もちろん、単純に親睦を深めるためであったり、アトラクションに乗るためが目的ではありません。ここでは、ディズニーリゾートで働くキャストのおもてなしの心について学べる「ディズニーアカデミー」があります。
このディズニーアカデミーは、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーで働くすべてのキャストが、入社時にディズニーフィロソフィー(哲学)を学ぶ場です。キャストたちが実際の現場での判断や行動の拠り所としているのが、
S=safety(安全)、C=courtesy(礼儀正しさ)、S=show(ショー)、E=efficiency(効果)の4つのカギ「SCSE」)で、私たちの研修旅行でも、このSCSEの意味やどうして大切なのかを学び、ディズニーランドの清掃方法やお客様への接遇方法も教えていただきました。

一流のサービスを誇るディズニーのフィロソフィーやノウハウを学び、実際に現場を見ることはとても大事です。そして更に重要なことは、「そこで見聞きしたことをクリニックでどう活かすのか」をスタッフ一人ひとりがしっかり考え、実際に行動に移せるまでの一連の流れを研修旅行としています。そのため、研修旅行の後にはスタッフ同士で考え話し合う時間を設けています。これにより、研修旅行で学んだことをより深く自分の中に落とし込むことができると思うのです。
この研修も「楽しみながら学ぶ」という取り組みのひとつと言えるでしょう。

研修の成果を上げるには?

■ チームビルディング研修

次に、毎月定期的に行う「チームビルディング研修」をご紹介します。この研修は、スタッフでチームを作り、学ぶべき内容をクイズ形式で出題し、チームで競い合うというエンターテイメント性も備えた研修です。座学のみで行う研修より、スタッフたちが楽しみながら学ぶことができ、より興味を持って取り組んでもらえます。また、クイズを作るためには、その内容に対する深い理解が必要となるので、単に聞いて得る知識よりもしっかりと正しい知識を身につけることができます。

チームビルディング研修

■ 院内勉強会

このほかに「院内勉強会」も開いています。これはお昼休みに行う、気取らない任意参加の勉強会です。外部のセミナーを受けたり、本を読んで学んだスタッフが、それらを通して学んだことや面白かったこと、興味深かったことなどを勉強会に集まったスタッフとシェアします。この勉強会の内容は、クリニックの業務と直接関係ないことでも良く、ダイエットや食、美容、健康など、女性スタッフが関心のあることであれば何でも良しとしています。この勉強会の目的は、「勉強は嫌い」という思い込みや制限思考的な考えを取り払って、「学ぶことは楽しい」と感じてもらうことです。
様々な研修を通して、学ぶことの楽しさや大切さを知り、スタッフ一人ひとりが人間力を高めてくれることが、クリニックに相応しいスタッフになることに繋がり、このことが患者さんに信頼していただいたり、クリニックの発展に最も重要なことなのではないでしょうか。

⇒次回は「41.クリニックに相応しいスタッフになってもらうために⑤」
※2018年に執筆したコラムに加筆修正をしたものですので、現在は取り組んでいない運営方法・研修・教育方法などもござます。

開業医コミュニティM.A.Fではクリニック経営についての情報発信、セミナー開催など行っております。最新のM.A.Fからの情報を得るために無料のメールマガジンにご登録ください。