39.クリニックに相応しいスタッフになってもらうために③

■ ザ・リッツ・カールトンの接客

前回のコラムで「梅華通信」はクレド手帳にも綴られているとお話しました。
クレドとはラテン語でいう信念や信条のことです。私がクレドに興味を持ったのは、大阪の5つ星ホテル「ザ・リッツ・カールトン大阪」のコンシェルジュをはじめとするスタッフの対応に目を奪われたことがきっかけです。
ザ・リッツ・カールトンがホテルの中のホテルと言われるカギは、最高級の設備よりもスタッフの接客にあるのではないかと思いました。そこでまず、梅華会の忘年会をザ・リッツ・カールトン大阪で開催することにしました。ホテルとクリニックとでは業界が異なりますが、お客さま(患者さん)に提供するものはどちらもサービスです。私のクリニックのスタッフにはザ・リッツ・カールトンの一流のサービス‐規律ある中にもスタッフが備えるべきホスピタリティ‐に触れてもらい、日々のクリニック業務に活かしてほしいと考えました。自分たちが一流になろうとするのであれば、一流のものに触れることが何より大切と私は思うのです。5つ星ホテルで忘年会を開催する私の意図は、スタッフの1年間の労を労うためであると同時に、研修の場にしたいということです。
初めてこのホテルで忘年会を開催した際、スタッフはその場の雰囲気に圧倒され、会食を楽しんでいるようには見えませんでした。しかし、毎年このホテルで開催した結果、今ではピンと張りつめた荘厳な雰囲気の中でも臆することなく、スタッフが楽しめるようになってきたと感じています。私のクリニックのスタッフが、このホテルのスタッフのきめ細かな気遣いや想いやりに触れたことで、次第にサービスの本質に気づき、患者さんへの対応や想いやりが劇的に改善されました。

ザ・リッツ・カールトンの接客

■ ザ・リッツ・カールトンのクレドカード

ところで、この一流のサービスを提供するホテルのスタッフたちはどのような教育を受けているのでしょうか?私は、ホテルのスタッフが身だしなみの一部として、必ず、ザ・リッツ・カールトンの信条や信念を書いたクレドカードを携帯していることに注目しました。
そのクレドカードには「リッツ・カールトンはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています。」と書いてあるそうです。それはもっと具体的に言えば「お客さまに心地よい」と感じていただくことだというのです。

現場に立つスタッフは様々な課題に直面することが多いと思います。どれだけ綿密に考えられたマニュアルを作り、どれだけしっかりとスタッフの頭に叩き込んだとしても、マニュアルに記載されていない要求や行為をお客さまが求めた場合、スタッフはどのように動いたらいいのか判断できません。その結果、スムースな対応ができずお客さまに心地よいと感じていただくことはできません。
ザ・リッツ・カールトンのような真のサービスを提供するためには、スタッフ一人ひとりがクレドに沿った価値観を持ちながら、その場その場で問題を解決し、組織として一貫性のある行動を取れることが重要なのだと理解しました。

梅華通信

■ 梅華会のクレド手帳

開業から数年後、当時のスタッフと1年がかりでクレドカードを制作しました。前々回のコラムで紹介した身だしなみチェックリストと同様に、クレドカードも私ひとりで作るのではなく、スタッフの主体性を大事にしました。以来、このクレドを毎日終礼で読み上げ、その時思ったことや感じたこと、クレドに沿って実践したことを一人ひとりに語ってもらうようにしています。そうすることで自然と、このクレドがスタッフ一人ひとりの中に浸透していると感じています。日々、このクレドが浸透していくことを感じる中で、組織にとっての哲学的な行動指針であるクレドを作ったことは、クリニックの運営において非常に有効なものであったと実感しています。
梅華会ではこのクレドカードが発展し「クレド手帳」となりました。信条や信念のみならず「梅華通信」の内容や、梅華会の中長期計画なども記載しています。また、毎月のスタッフミーティングではクレド手帳を基に梅華会のミッション・ビジョン・バリューについて語り合い、個人の意識に落とし込むことも行っています。
梅華会のクレド手帳は、院長である私の方針や考え方、組織のこれからの方向性などを新しく入ったスタッフがきちんと把握したり、ベテランスタッフが再確認したりするための良いツールにもなっています。今後はさらに、福利厚生や就業規定の一部なども入れ込み、スタッフにとってより親しみの持てる、そして広範囲に活用できる手帳にしたいと思っています。

梅華通信

⇒次回は「40. クリニックに相応しいスタッフになってもらうために④」
※2018年に執筆したコラムに加筆修正をしたものですので、現在は取り組んでいない運営方法・研修・教育方法などもござます。

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