21. 読書の勧め

■ 経営者は一生勉強

開業を志し、このブログを読んでくださっているドクターの皆さんなら、未知の分野である経営に関する書籍を時間が許す限り読んでいらっしゃることと思います。そうでなく、医療関係の開業・経営コンサルタントにただ全て委ねていらっしゃるとしたら、言葉が厳しいかも知れませんが、そのクリニックの先は自ずと知れたものと言えるでしょう。
開業を志したときは経営について真剣に学ぼうとしていた皆さんも、一旦開業してしまうと、日々の診療とそれ以外の雑務に追われ、いつのまにか経営に関する学びを忘れてしまうことも少なくないのではないでしょうか。しかし現在、社会の変化はdog year(イヌの1年=成長の速いイヌにとっての1年は人間の7年に相当するという意味で、技術革新など変化の激しいことのたとえ)、社会情勢や経済情勢、医療を取り巻く環境や医療に対する政策も刻一刻と変化しています。
1年前を振り返ってください。
アメリカやヨーロッパではポピュリズムを主張する国家元首の選出が相次ぎ、イギリスはEUの脱退、アメリカはTPP離脱を表明しました。1年前、誰がこんな事態を想像していたでしょう。例えば、TPPは日本の保険医療制度に何らかの影響を与えるかも知れません。医薬品や医療機器が安く手に入ることになれば、それは経営者としては嬉しいことですが、安全面ではどうなのでしょう? TPPは農産物や自動車だけの問題ではないのです。TPPが締結され日本が批准したらどう対応すべきなのか、1年前は真剣に考えていた私ですが、アメリカが離脱したらどうなるのでしょう…?経営者となると常に最新の情報を入手しながら大いに学ぶ必要がありそうですね。つまり、経営者となるからには、医療だけでなく、政治経済など様々な情報にアンテナを張り、一生学び続ける必要があります。私は「一生勉強する気がないなら経営者としてクリニックをやっていく資格はない」と思っています。

経営者は一生勉強

■ 成長するか衰退するか

法人にならなくても、分院を待つほど大きくならなくてもいい。ホドホドでいいのだ、生活できれば…と思っていらっしゃる方もいるでしょう。かく言う私も、開業前はボチボチ・ホドホド、ある程度経営が安定していれば良し、と思っていた時期もありました。ある程度経営が安定したら、自分は診療に集中しようと思っていました。
しかし、実際に開業してみるとそうではありませんでした。「万物は、成長しつつあるのか死につつあるのか、そのどちらかである」とある書物で読みました。クリニックの経営も例外ではなく、現状維持ということはないというのが実感です。会社や組織、そしてクリニックも生き物ですから、成長するか衰退するか、そのどちらかです。クリニックを開業したからには当然衰退は望んでいないでしょうから、目まぐるしく変化する環境の変化に対応するために常に勉強しなければなりません。
また患者さんも、単に治療をしてもらうだけでなく、常に期待を超えた精神的な安定をも含めた医療を提供してもらうことを望まれます。そして患者さんの期待は徐々に高くなるのが通常です。初回は感激されていた対応も、続けばそれは普通になります。ですから、常に患者さんの期待を上回る対応を提供しようと思えば、私たちはさらに学習しなければなりません。

成長するか衰退するか

■ 読書は自分への投資

そして、この学習は院長のみならず、スタッフ一人ひとりも継続する必要があると思います。そのためには、常に学習し続ける院長の背中を見せていくことが必要だと思うのです。そして、学習の中で最も手っ取り早く、費用も掛からないのが読書です。治療に関する専門書と違って、経営に関する書籍なら高くても約2,000円。読み進めれば、著者の想いがたくさん詰まり、著者のこれまでの人生で得た知識や考え方が疑似体験でき、しかも自分の都合のよい時間に手に取ることができるのですから、読書は最も効率的な自分への投資ではないでしょうか。

私の読書習慣は、幼少期に両親から授けられた最もありがたい財産と思っています。しかし、最近の若者の活字離れが叫ばれ、それは医学を目指しエリートの道を歩んできた皆さんでも例外でないのが残念です。ちなみに、私は年頭、2017年は1年間に100冊の本を読むことを目標としました。それはいずれお話しする「速読」を学んだからできることでもあるのですが、私のカバンには常に2~3冊の本が入っていて、いつでも空き時間に本を手に取ることができるようにしています。
本のテーマ・内容は、内外の賢人たちが著した経営に関する書籍が多いのですが、歴史書も好んで読みます。その本の時代背景に自分の身を重ね、ワクワクドキドキする楽しみもありますが、歴史書に出てくる人物には大いに学ぶ点があります。この調子で行くと、今年は恐らく100冊という目標は軽く突破し、150冊位を読破することになるのだろうと思います。

読書は自分への投資

■ 読んでいただきたい1冊

最後に「私もビジネス書を読んでみよう」と思った方に、今の私の原点ともなった、人生を変えるほどの衝撃を与えた本をご紹介します。スティーブン・R・コビィ博士が著し、全世界で何千分万部と読まれた本『7つの習慣』です。その中で紹介される7つの習慣は、効果的に生きるための習慣で、住んでいる地域や国、宗教を問わず共通した、人間としての根本的な原理原則です。私と私のクリニックには、その7つの習慣に則って目指す風土と文化があります。開業を志す皆さんにも、是非この本を読んで実際に7つの習慣の意味するところに真にアクセスしていただきたいものです。
そして、自分の見つめ方や他者との関わり方などを深く理解し、参考にしていただきたいと思っています。

⇒次回は「22.女性スタッフとのコミュニケーション」
※2017年に執筆開始をしたコラムに加筆修正をしたものです。

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