■ 満足度向上のためには待ち時間対策を
本当にありがたいことに、私のクリニックを受診される患者さんの数は年々増えており、2022年時点では本院と分院が5つの、計6院体制の法人となりました。その中で「患者さんがクリニックに求めるものって何だろう?」「患者さんはクリニックのどんなことを好ましく思い、どんなことを嫌だと思っているのだろうか?」という点を考えてみました。
クリニックに来て病気が治ることや症状が軽減されることは、患者さんにとってはある意味当たり前です。病気が治り、症状が軽減されたからといって、次回もまた受診してくださるとは限らないと思っています。
患者さんが「このクリニックに来て良かった」、「次回もまた来よう」と思ってくださるにはいくつかの要因があると考えます。開業医の場合、特に来院患者数が増えてきたとき、患者さんの抱く不満の大きな要因は、待ち時間の長さだと思います。大病院ではないのですから、どんなに素晴らしい医療技術を提供できたとしても、受診が半日がかりとなってしまうようでは、患者さんは決して喜んで下さらない、満足して帰られないと思うのです。そこで今回は当法人が行っている、患者さんの待ち時間短縮に向けた取り組みをいくつかご紹介します。
■ 患者さんの動線の短縮
1つ目は、患者さんの動線の縮小です。
待ち時間の短縮施策としてまず思い浮かべるのは、予約システムです。実際は予約を入れても待たされるというのが患者さんの感想だと思っています。そこで、もっと根本的に時間の短縮を図ろうと考えた結果、当クリニックではクラークを置くことにしました。クラークについては、他のコラムでもご紹介していますが、簡単にご紹介します。
クラークが医師の診察に先立って患者さんから病状等の聞き取りを行うことで、通常では①受付→②診察室→③検査室→④診察室→⑤処置室→⑥会計のようになる患者さんの動線が、①受付→②検査室→③診察室→④処置室→⑤会計のように、診察室に入っていただくのが1回で済むようになります。
患者さんは移動するたびにそこで待たされると感じるでしょうから、1回でも移動が少ないのに越したことはありません。またなんといっても、動線が滞るのは通常診察室ですから、診察室に入る回数が減るということは大きな時間短縮に繋がります。さらに、当法人では電子カルテへの入力もクラークにお願いしているので、診察と入力の同時進行が可能です。私の感覚では、同じ時間内で2倍とは言いませんが、患者さんを1.5倍は多く診ることができていると感じます。これは、患者さんの大事な時間を短縮するとともに、医療を提供する私たちの時間確保にもつながるという大きなメリットだと思います。
■ 待ち時間の満足度向上施策
次に、直接的な時間短縮には繋がらずとも、同じ待ち時間でいかに患者さんの満足度を上げられるか、という視点での対策です。
当法人では、医師の診察後会計までの間に、タブレットを利用して、患者さんの病気や治療に対しての説明を再度行っています。患者さんにとって、医師の説明は意外と伝わっていないことが多い上、その時は理解していたつもりでも、家に帰った時にはほとんどを忘れてしまっている可能性さえあります。そのようなことを防ぐためにも、私の法人では、スタッフが罹患している病気や治療方法について、タブレットで見ていただきながら分かりやすく説明しています。
患者さんに目で見て理解してもらうことにより、短い時間でより深く理解していただけると考えています。また、医師にはできなかった質問も、笑顔のスタッフにはしやすく、気軽に相談もできるといった点からも、患者さんから好評を得ていると感じています。
このほか、クリニックに設置したモニターでは、院内動画を流しています。40インチのテレビモニターをパソコンと繋ぎ、パワーポイントなどで作成した患者さんへのメッセージを流しています。内容は、私からのメッセージ、特殊外来の告知、予防注射の接種時期の告知や患者さんへのアンケートの集計結果などです。ずっと同じものでは患者さんも飽きてしまうと思うので、毎月変更して季節に合った内容を表示するよう心がけています。また、当法人が耳鼻咽喉科であるので、特に混雑が予想される春先などでは、受付混雑予測を表示する場合もあります。月曜日から土曜日までの午前・午後のどの時間帯なら比較的空いているのかをお知らせすることで、患者さんが比較的空いている時に来てくださることを意図し、曜日や時間による患者数のばらつきを少しでも緩和できればと思っているからです。
そして、当法人では、患者さんに対してクリニック内での取り組みや今後の活動などを周知するために、3ヶ月に1回「うめはなしんぶん」というニュースレターを作成しています。医学的な知識やインフルエンザの予防接種などタイムリーな情報なども載せていますが、私やスタッフ対してより親しみを持っていただきたいので、人柄が分かるようなイベントのレポートなども掲載しています。この「うめはなしんぶん」は待ち時間に患者さんに手に取って見ていただけるよう、クリニックでお渡しもしていますが、バックナンバーも揃えてホームページに掲載しています。待ち時間に見ていただくことで、時間つぶしになるだけでなく、クリニックのことをより理解していただき、親しみを持っていただけているかな…と感じています。
⇒次回は「32.業務のマニュアル化」
※2018年に執筆したコラムに加筆修正をしたものです。
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