29. 院長の想いの伝え方

私はこれまで院長やクリニックの理念をスタッフに浸透させることが大事とお話ししてきました。今回は、理念も含んだ私のクリニック経営への想いをどのようにスタッフに伝えているかを、具体的にいくつかご紹介したいと思います。

■ 想いを伝える手段①ミーティング

まず、どんな組織でもやっているのはミーティングです。
私の法人では、全体ミーティング、部署ごとのミーティング、幹部ミーティングなどがありますが、私の法人におけるミーティングの存在意義は「収束」と「発散」です。「収束」とは、ミーティングは単なる私からの報告や通知を行う場ではなく、私のメッセージを伝えると同時にそのメッセージに対してそこに参加する全員が意見を出す場としているということです。もう一つの「発散」とは、ミーティングをスタッフからの多様な意見を広く集めて議論する場としているということです。つまり、私の法人では、私の一方的な報告や指示の類はミーティングでは行いません。それらは院内SNSで発信すれば事足りるからです。

現在、規模の大きくなった私の法人では、スタッフ全員が集まる全体ミーティングはせいぜい年2回となっていますが、その時は伝えようとする私の想いや考えと法人の目的や目標とを擦り合わせ、目的や目標に沿って私の想いや考えを伝えるよう心掛けています。SNSで発する文書についても同様の点に心がけています。法人理事長としての想いや考えの軸がぶれていると、スタッフも行動の指針が分からなくなり、現場に混乱が生じるからです。
また、私の法人では、毎月の月末には前月の法人の数値や法人のトピック、現在の動向などを600字くらいの文章にまとめて院内SNSで流すようにしています。そこでは、その時の私の法人に対する想いとともに最低限の経営的数字も入れて、スタッフ全員に法人の経営状況を知ってもらうことも意識しています。経営的数字はもっと多くを見てもらいたいという気持ちもありますが、あまりに専門的な数字も入れてしまうと、馴染みのないスタッフにはピンとこなくて、結局全部をスルーしてしまうことになると困ります。よって、レセプトの枚数や新患の患者数といった分かりやすく馴染みやすい数字を知らせるようにしています。
スタッフにクリニック経営も一種の商売だという意識を少しでも持ってもらいたいと思っているからです。

想いを伝える手段①ミーティング

■ 想いを伝える手段②「理事長の想いを伝える会」

次に、私の法人では毎年6月、「想いを伝える会」という経営方針の発表会を行っています。この会で配布する資料には中期的事業計画を発表し、これからの法人の向かう先を伝えるようにしています。そこでは、法人にとってどのような人財が必要であるか、どのような教育を行うか、どのような仕組みをつくるか……といった細かなことも発信しています。なぜなら、今置かれている自分の位置をスタッフ一人ひとりに再確認してもらって、これからの自分の努力目標を意識してもらいたいからです。
この「想いを伝える会」では、中長期計画とともに、法人として大切にしているミッション・ビジョン・バリューも毎年繰り返し伝えています。その際、伝え方や切り口を毎年変えて伝えることで、ミッション・ビジョン・バリューがスタッフにより浸透するよう工夫しています。この会を継続させてきていることで、最近ではスタッフが成長してくれていて、クリニックの理念に対して、自分がどう考えてどう行動していくかを他のスタッフに伝えられるようになってきています。
 法人の理事長、クリニックの院長は経営者です。経営者の第一の仕事は法人やクリニックの将来を考えることです。これから先のクリニック運営で、どんなことにチャレンジしていくのか、どんなクリニックにしていくのか……をスタッフに伝えることによって、スタッフの中にクリニックの将来のイメージを抱いてもらうことが必要です。イメージを持ってもらうことで、理事長や院長の言っていること、やっていることが理解しやすくなると考えるからです。

想いを伝える手段②「理事長の想いを伝える会」

■ 想いを伝える手段③感謝祭

また、どこの組織でも行っている忘年会ですが、私の法人では感謝祭と銘打ち、これまで大阪のザ・リッツ・カールトンやコンラッド大阪などで開催しています。これは単に1年間のご褒美として一流ホテルでご馳走を食べようという目的だけで開催しているのではありません。スタッフに一流のサービスを経験してもらい、ある種のサービス業とも言えるクリニックという職場で、患者さんへの接し方に活かしてほしいと思っているからです。
そして感謝祭としているのは、1年間のスタッフの労をねぎらうとともに、次の1年のマインドセットとして欲しいとも思っているからです。従って、スタッフ全員の存在を承認するための表彰制度を確立し、感謝状を贈っています。それが感謝祭の命名理由です。
クリニックのミッション・ビジョン・バリューの達成に向かって法人が一丸となって取り組みたいとの想いをスタッフ一人ひとりに伝えたいと心から思っているので、その気持ちを表した結果、このような制度が出来上がりました。

私の想いを伝える手段として、①ミーティング、②想いを伝える会、③感謝祭の3つを紹介しましたが、このほか、毎日の朝礼、終礼でもことあるごとに私の想いを伝えるように心がけています。

想いを伝える手段③感謝祭

⇒次回は「30.リーダーの育て方」
※2017年に執筆開始をしたコラムに加筆修正をしたものです。

開業医コミュニティM.A.Fではクリニック経営についての情報発信、セミナー開催など行っております。最新のM.A.Fからの情報を得るために無料のメールマガジンにご登録ください。