■ 医師にもワーク・ライフ・バランスを
実は私は今、次の本の出版のための執筆に取り掛かっています。次の出版本のテーマは、ワーク・ライフ・バランスです。
数年前から、国の政策としてもワーク・ライフ・バランスを重視した働き方改革が行われるようになってきています。ところが、私たち医師はその仕事の内容が医療という人の命を預かることなので、プライベートは犠牲にして仕事中心の生活を送っていることが多いのではないかと思います。
しかし、医師とて一人の人間。他の職種と同様にワーク・ライフ・バランスを重視した働き方があっていいのではないか?現に私はそれが徐々にではありますができてきている……ということから、皆さんに少しでもその方法をお伝えしようとの想いで本を書き始めました。
今回のコラムはその一部をご紹介したいと思います。
■ 働き方改革はスタッフへの業務委譲から
医師が働き方改革に取り組むための方法は、一言で言えば時間管理の仕方、万人共通である24時間をいかに有効に使うかです。通常、開業医の皆さんはクリニックの仕事の殆どを一人で抱え込んでいることが多いと感じます。
私も開業したばかりの頃はそうでした。何から何まで自分でやっていました。
それは、スタッフにしてもらうと時間が掛かる上に、手直しが必要だったりして業務が終了するまでにかえって時間が掛かってしまうからです。しかし、長期的な視点でその業務に自分が一生費やす時間を考えれば、スタッフにもできる業務に関しては、少し時間をかけて100点とはいかなくても及第点が取れるように共育をして任せれば良いと考えました。
共育に必要な時間は自分の一生を考えれば取るに足らない時間です。
つまり、必ずご自身でしなければならない業務以外はスタッフに任せることが可能となる教育を行い、仕組みを作れば、ご自身が好きに自由に使える時間が作れることになります。その具体策は書籍に譲りますが、自分以外では出来ない業務は究極のところ経営者として真に行うべき業務だけです。そして究極には医師としての本分である診療だって代診に譲ることは可能です。もっとも、生業としての診察であったらという意味であって、趣味ともいえるほど診療することを生きがいとしているドクターなら、私がランニングをするように診察をすることでOKということです。
■ To Doリストで時間の可視化を
また、時間を可視化することも重要と思っています。
時間を可視化するとは、やるべきことをリストアップして、紙に書いて目に留まるところに貼っておくことです。常にそのリストを見られる環境にあると、自分の潜在意識の中にそのことが浸透していきます。そして、どんな順番でどんなふうに取り組んでいけばいいのかイメージが湧いてきます。そうしたら、それを基に計画を立てればいいのです。
紙に書き出さないと目標の1~2割しか達成できないけれど、書き出すと7~8割は達成できるというのが、私の実感です。
時間を可視化すると同時に、やらないことを決めることもとても重要だと思っています。これは、私が受講したアンソニー・ロビンスのセミナーで知ったことですが、彼はここ20数年、スーパーマーケットに行ったこともないし、自分で車にガソリンを入れたこともないそうです。自分でスーパーマーケットに行かなくても、いつでも冷蔵庫には彼の欲しい食料がたっぷりと入っていて食べたい時にいつでも食べられるし、ガソリンを入れに行かなくても常に十分なガソリンが給油されているそうです。なぜなら、そういった仕組みを作っているからなのだとか。
冷蔵庫を常にチェックして古い食品を破棄し、足りない食品を補充するスタッフがいる。ガソリンをチェックして常に満たしておくスタッフがいるということです。これは極端な例ですが、スタッフの誰かにある業務を任せ、それに関する権限を委譲できれば、自分はその業務をやらなくて済むわけです。本当に単純で簡単な業務から徐々に権限委譲を始めてみましょう。
■ 業務の断捨離を
最後に、時間管理において一番簡単ですぐできることは、何かを捨てることです。世の中は断捨離ブームですが、クリニックの業務についても思い切って断捨離してみましょう。以前は必要とされていた業務でもここ1年まったく効果がなかった業務はないでしょうか?また、時間に限らず、ここ1年一度も出番のなかった物品や書類はないでしょうか?この業務や物品は何を目的としていたかをもう一度見直して、その上で必要ないと考えられる業務・物品であったなら、思い切って捨てることで、新たな時間が生まれてきます。
このようなワーク・ライフ・バランスに悩むドクターへの提言やワーク・ライフ・バランスの次のワーク・ライフ・インテグレーション(仕事とプライベートの統合)を目指す私の取り組みなどが満載の書籍にしたいと思っています。出版予定は来年の秋?これも私のワーク・ライフ・インテグレーション。頑張ります!
⇒次回は「27.クリニックのホームページ」
※2018年に執筆したコラムに加筆修正をしたものです。
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