6. 開業するために必要なチーム

私はここまでに開業医は経営者であり、その心構えはサラリーマンである勤務医とは異なるとお話ししてきました。心構えはさておき、いざ開業を考え始めると「実際にはどうやったら開業できるか」という現実問題に直面します。開業地選びでの私の失敗談をお伝えしましたように、うっかりすると開業までの一つひとつで失敗をしてしまうことになりかねません。
この回からは、開業するための具体的方法を、私の経験から少しずつお話しさせていただきたいと思います。
最初のテーマは開業するために必要なチームづくりです。

■開業コンサルタントを雇う

最近では、医療に特化した開業コンサルタント(以下、コンサル)とチームを組む方法が最も多いです。開業コンサルの業務内容には、以下のような業務があります。

  • ・開業地の選定
  • ・開業の資金計画
  • ・銀行との折衝
  • ・医療機器導入斡旋・交渉
  • ・建築会社の斡旋・交渉・監督
  • ・スタッフの採用
  • ・クリニックの宣伝・広報
  • ・届出書類の作成・提出

これらの、開業までの面倒な業務全般です。ただ注意が必要なのは、コンサルによって請け負ってくれる業務内容が異なるという点です。

開業コンサルは大きく分けると、
①開業までを請け負ってくれるコンサル
②その後の経営支援までを請け負ってくれるコンサル 
の2種類があります。
当然ですが、開業コンサルのビジネスポイントは開業させること、つまり、開業させれば開業コンサルは収益が上がるのですから、開業をスタートラインと考える我々ドクターとは、視点の違いが自ずと出てきます。

例えば、大手ゼネコン系の開業コンサルに依頼したら、綿密に立てたはずの当初の計画より開業の必要経費が膨らんでいき、そのほとんどが建築費になっていたという話も耳にしたことがあります。当初の計画以上の借金をすることになったり、資金調達の関係で購入するはずだった高価な医療機器はリースすることになって、高額なリース代をずっと支払う羽目になったりしてしまうのです。
すべてのゼネコン系の開業コンサルがそうだとは言いませんが、実際にそのコンサルに依頼してサービスを受けたドクターから話を聞くなど、契約する前にコンサルの実態調査をすることが絶対に必要です。
また、当初計画より経費がかさむ理由の一つとして、慣れない単位の数字の羅列と時間に追われることで、ついついコンサルの言いなりになってしまうという点が挙げられます。
通常、コンサルとの打ち合わせは、診療時間後となることが多いと思います。
場所がコンサルの事務所ということも多く、ついつい相手のペースに巻き込まれがちです。早くしないと開業が間に合わないなどの言葉に動揺し、熟慮しないで相手の言いなりになる…これは勤務医の弱点かもしれません。借金をするのは自分、返済をするのも自分、ということを肝に銘じておく必要があるでしょう。

これに対して会計系の開業コンサルもあります。
会計系コンサルの良い点は、開業をゴールとしていないところです。なぜなら、クリニックの経営が順調にいけば、顧問料として税務会計業務を半永久的に請け負うことができるからです。ただし、専門は税務・労務なので、開業のサポートに関するノウハウに関しては若干劣るような気もします。
いずれにしても、開業後のフォローもしてくれるような信頼関係を結べるコンサルと手を組むことができるかどうか。これが、開業後に順調に発展できるかどうかのカギになると言っても過言ではありません。インターネットで開業コンサルを検索してみるのも一つの手でしょうが、目先の宣伝文句にとらわれず、ゼネコン系、会計系、あるいは商社がバックについているなど、その会社情報をしっかり見て、熟慮する必要があると思います。

開業コンサルタントを雇う

■医薬品や医療機器の卸業者さんに相談する

昔はとても多かったと聞きますが、出身大学の医局の先輩などから紹介を受けて、出入りの医薬品や医療機器の卸業者さんに開業のサポートをお願いすることも可能です。
この場合、先方の目的は、開業後に一時的にでも売り上げが大幅に伸びることです。
より良い信頼関係ができれば、お互いにとってWIN-WINの関係(双方に益があって良好な関係)が築けて、開業後もうまくサポートいただけます。しかし、場合によっては相手にうまく利用されるだけになってしまうこともあり得ます。どこまでサポートいただけるのかを事前に確認する必要があると思います。

このほか、開業するには建物を建てたり、内装を手掛けたりする建築関係の業者さん、医療機器の販売業者さんなどともチームを組まなければなりません。これらもすべて請け負ってくれる開業コンサルさんもあるでしょうが、その場合でも、自分が目指すクリニック像を個々の担当に自分の声で伝える必要があると思います。

そして、どこの誰とチームを組むのかは、いわゆるセカンドオピニオン的に、信頼している先輩のドクター、既に開業し成功しているクリニックの院長、薬局のオーナーさん…などなど、経験豊富な方々のアドバイスを受けることも重要だと考えます。

開業コンサルタントを雇う

⇒次回は「7.家族のコンセンサス」
※2017年に執筆開始をしたコラムに加筆修正をしたものです。

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