68. 診療時間の短縮

 私の専門は耳鼻咽喉科です。ですから、2月も中旬となると花粉症の患者さんが増えはじめ、3月、4月は繁忙期に入ります。

 どこのクリニックでもそうでしょうが、クリニック経営が順調で多くの患者さんに支持されているクリニックは、いつも昼休みは短く、診療時間も延長して対応していることが通常と思います。午前の診療が終了すると昼食もそこそこに午後の診療開始…などというドクターもいらっしゃると聞きます。ましてや、繁忙期がある診療科ではその時季の診療時間の短縮は大きな課題になっていると思います。そして、それは院長のみならず、スタッフの問題でもあるわけです。

 診療時間の短縮と申しましたが、患者さんの受付から会計までの動線のうえでボトルネックになっているのは、常にドクターの診察のところなのは明白なので、時間を短縮するには医師の診察時間を見直すことが必須と思います。でも、なにも診察に手を抜いて一人当たりの所要時間を短くして対応しろ…と言っているわけではありません。

例えば、繁忙期だけ非常勤勤務医をお願いして、2診制、3診制にするという対処方法も考えられますが、自分と勤務医の診療方針や診療方法の擦り合わせなど、出身の医局などが異なると課題も多く含みます。また、当然、報酬も支払わなければならないので、人件費も多くかかることになります。

 

そこで、私は、繁忙期も閑散期と同じスタッフ人数で、いかにしたら診療時間を短縮できるか考えた結果、診療時間の短縮には何と言ってもクラークの存在が大きいという結論を得ました。複数の診療科を持つ病院などではよく見かけるクラークですが、個人のクリニックで見かけることはあまりないのではないでしょうか。ですが、私は患者さんの待ち時間をどうしたら短縮できるかを考えたすえ、クリニックにクラークを置くことにしました。

通常はカルテに入力するのは医師と思いますが、私のクリニックではカルテへの入力はクラークが行っています。医師が診察に専念することで、私の感覚では1.5倍くらいの患者さんの診察ができるようになります。当然、患者さん1人当たりの診察時間が3分の2に短縮できるようになるわけです。

さらに、電子カルテへの記載をクラークが行うと、医師はしっかりと患者さんと顔を合わせて診療できます。とかく、医師はパソコンの画面ばかり見て患者を見ていないと言われる昨今ですから、患者さんに満足して帰っていただくためにも、クラークを置くことは大いに役立つと考えます。

クラークを置くということは人件費を考えれば一人分増えることになりますが、逆に診療時間が短くなれば、スタッフ全体の残業代が減るとともに、スタッフの疲労度も減る(不満も減る)ので、院長、スタッフ、患者さん、すべてにとってプラスに働くと考えます。

また、クラーク業務を習得しているスタッフがいると、受付、会計、検査、診察を含め、各ポジションを総合的に見渡して補助してくれるので、各ポジションが有機的に機能するとともに、各ポジションのスタッフ業務習熟レベルが向上するのも実感します。人は誰でも自分のポジションで渋滞が起こるのを避けるように行動するのだということがよく解りました。

ただし、クラークはクリニックのスタッフの中では最難関のスキルが求められるポジションです。日々診療だけでも忙しい院長がどうやって教育するかが課題だと思います。

まずは一般論ですが、勤務をしているスタッフの働きぶりを見て、気働きがして全体を見渡すことができそうな人を教育してみてはいかがでしょう。すぐにとはいきませんが、閑散期に指導していくといいと思います。ただし、本人の希望もありますので、事前にクラークとして働くことに対する本人の考えを聞いておくことはもちろん大切です。また、電子カルテへの入力をお願いするとなれば、フォーマットに従って記載する必要があるので、ある程度のパソコンのスキルが必要です。また、電子カルテへは、医師と患者さんとの会話の中にあるキーワードも入力する必要があるわけですが、医師にとって当たり前のキーワードをクラークがキーワードと認識するようになれるかが一つのポイントです。これには少し時間がかかります。そこで、キーワードに関するクラーク用のマニュアルはしっかりと作っておかなければなりません。

私の経験から言えば、スタッフを信じて、この子ならできると思えばできるようになるものです。私のクリニックでできているのですから、皆さんのクリニックでできないはずはありません。私の場合は、札幌の耳鼻咽喉科麻生病院に勤務していたころ、20歳の医療専門学校出身のクラークが、たった入職半年で立派にクラークの仕事をこなしているのを見て驚き、これは医師にしかできない業務というような自身の思い込みが取っ払われた経験が、自分のクリニックにクラークというスタッフを置くという発想の基となっているように思います。

百聞は一見に如かず、クラークの働きぶりを直接御覧になりたい方は、私のクリニックでは随時クリニック見学を受け付けています。ご興味のある方は、

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