57. ドクターのキャリア

近ごろの私は4冊目の本の出版のために校正ゲラを確認していました。4冊目の本は、どうやったらドクターも一人に人間として仕事もプライベートも充実し幸せな人生を送れるのかについて私の考えを書いているのですが、その根本ともいえるドクターのキャリアについて、私の考えをお話ししたいと思います。

 

 そもそも皆さんは何のためにドクターという職業を選んだのでしょう? 学業の成績がよく何となくとか、開業医の家に生まれたからという理由の方もいらっしゃるかもしれませんが、ドクターとして病気で困っている方を救いたい、ドクターとして社会貢献したい‥‥と考えて医学部に進学された方が多いのではないかと私は思います。かくいう私も祖母の病気をきっかけに医療というものを意識し、自分も医療を通して社会貢献したいと考えました。特にM.A.F.に興味を持ち、そこホームページを見ていてくださる方のほとんどがそういう理由だと思います。もちろん、不治の病を治す研究をしたくて医学部に入学した方もいらっしゃるかもしれませんが、多くの場合、臨床医として医療の最前線に立って、日々患者さんに医療を提供したいと思って入学したのだと思います。

 さて、医学部で皆さんはどんなことを学んだでしょう? 基礎課程においては、英語やドイツ語、哲学など直接医学とは関係のない授業もあったでしょうが、授業のほとんどは臨床医になるための知識や技術、その習得に励んでいたと思います。そして、医学部を卒業してからも大学の医局や系列病院の中で医局制度に縛られ、受け身で働いてきたことと思います。昨今では、研究医制度が変更され、より多様性のある働き方が可能になってきたとも聞きます。とはいえ、私は、我々ドクターは、自分の生き方を自由に選択できるという考えをあまり持っていないように感じます。

 そして、ドクターとしての技量も磨き、そろそろ開業しようか‥‥と思ったとき、院長として必要なマネジメントであったり、リーダーシップは充分に身についているでしょうか? また、クリニックの経営について学ぶ環境は、医学部時代から現在に至るまでにあったでしょうか? 開業したとのとたん、ドクターであると同時に経営者となるのです。

 医学生がすべて勤務医として一生働くことはないわけですから、本来なら大学で授業としてマネジメント論、リーダーシップ論やクリニック経営などについて学ぶ選択ができてしかるべきなのでしょうが、それがなかったのであれば、一生勤務医として働くか、はたまた、開業するかを選択する前にクリニック経営について情報を仕入れ、自分はどのようなキャリアをつくるかを、じっくり考え、開業の時に備える必要があるのではないか‥‥と私は考えます。ここでいうキャリアとは、ドクターとしてだけのキャリアではなく、人としてどのような人生を送るかという意味です。

 一方で、ドクターの人生を改めて考えてみると、特別な職業だからと、自己や家庭を犠牲にして仕事を優先させなければならないのでしょうか? そもそも仕事とプライベート、社会生活と私生活というように、区別したり優劣を付けるべきものなのでしょうか? 

 私は、ドクターのキャリアをもっともっと選択可能な多様性のあるものと捉え、自由に行動していいのではないかと思っています。私は現在、仕事とプライベートを区別することなく、どちらもとても楽しく充実しています。仕事はより短時間でより大きな成果を出すことを常に意識していますから、必要とあらば家で仕事をすることもあります。逆に、平日でも代診をお願いして家族旅行で海外へ行くこともあります。

また、私は人と交流することが大好きなので開業医のコミュニティーM.A.F.をつくって、志を同じくしたドクター仲間と情報や意見の交換をして、お互いに自分に相応しいキャリアをつくる努力もしています。このコミュニティーの運営は、従来の概念で言うドクターの仕事ではなく、自分の楽しみ、趣味と言えるのでしょうが、私の法人のミッションである「医療を通して日本の未来を明るくする」に貢献できることので、そういった意味では私の仕事とも言えます。つまり、これは仕事、これはプライベートと分けて考えるのではなく、ワーク・ライフ・インテグレーションして、自分が自分らしく生きるためには何が大事かを基準に行動しているのです。

ワーク・ライフのバランスについて書いている次の本は、皆さんに私と同じように生活することをお勧めしているわけではありません。ご自分の人生。ご自分のキャリアを見つめ直してほしいと思っているのです。ご自分のキャリアについてよくよく考えたうえで、自分はやっぱり医療に邁進するであってもいいのです。

いずれにしても、仕事もプライベートも充実するためにはその前提として、開業医の場合、クリニックの運営上の仕組みやルール作りが不可欠となります。この本では、それに関して私や私の法人の取り組みやルールを紹介しています。本となって書店に並ぶのは今秋の予定、出版記念の講演会も企画しています。皆さんとFace to Faceでお会いでき、お互いに刺激し合えたら幸いです。